実際にあったお薬手帳にまつわる話

実際にあったお薬手帳にまつわる話

薬局でお薬手帳を見てもらってよかった話

Aさんは副鼻腔炎でクラリシッドという抗生物質をのんでいました。なかなかよくならないので、他の医院も受診してみたところ、クラリスというお薬が処方されました。違う名前の薬なので、大丈夫と思い両方ともきちんと服用を続けました。お薬手帳は持っていましたが、見てもらうとお金がかかるものだと勘違いしていて、お薬手帳用のシールを自分で貼っていました。
薬剤師に手帳を持ってくるようにうるさく言われるので、ある日しぶしぶ見てもらったところ、こっぴどく叱られてしまいました。「Aさん、クラリシッドとクラリスは同じ薬ですよ!」
チェック代金を節約しようとして、逆に何倍もの無駄な医療費を支払っていたわけですね。副作用がなくて幸いでした。

お薬手帳を病院に持って行くのを忘れて危険だった話

Bさんは脳梗塞をおこしてからずっと、近くの医院でバイアスピリンを処方されてのんでいました。
ある日、自宅で転んで骨折してしまい、他院で手術を受けることになりました。
しばらく入院になるので、ご家族がいつもの薬をもらいに薬局に行き、事情を話したところ、薬剤師があわてて聞きました。
「手術はいつですか?Bさんは手術の前に中止しなくちゃいけない薬をのんでいますよ」
「え?今日です」
「すぐに病院に電話して、執刀医にバイアスピリンをのんでいることを伝えてください」
こうしてBさんの手術は無事に終わりました。
バイアスピリンには血液を固まりにくくする作用があるため、通常、手術予定日の7~10日前には一時的に服用を中止する必要があります。そうしなければ出血が止まりにくくなる危険があるからです。
お薬手帳を持って行くのを忘れると、命に関わる危険な事態を招くこともあるのです。

お薬手帳で副作用が発見された話

糖尿病で、食餌療法と運動療法を受けていたCさんが、腰痛で整形外科を受診しました。
ステロイド剤が処方されましたが、あまり良くならず次第に増量されていきました。
ある日、内科医から「糖尿病がとても悪くなったので、薬を出します。」と言われ、ショックを受けたCさんは薬剤師に相談しました。
過去半年間の検査値とお薬手帳を見てもらったところ、なんと糖尿病の悪化はステロイド剤の副作用だということがわかったのです。ステロイド剤は非常に強い抗炎症作用を持ちますが、糖尿病も悪化させる危険な副作用を持つお薬です。
Cさんの糖尿病はステロイド剤の減量・中止で次第に改善していきました。お薬手帳がなければ糖尿病が悪化した原因が分からずに、ずっと糖尿病薬を服用していたかもしれませんね。