ママのためのお薬講座

授乳とくすり

mama授乳中は薬の服用を避けたほうが安全です。しかし、授乳中でも、お母さまの病気の治療のため、薬が必要なこともあります。そんなときに医師から処方された薬でも、赤ちゃんに悪い影響があるのではないかと心配して授乳を中止したり、薬を飲むのを我慢したりすることもあるでしょう。

ところが、実際には必ずしも危険性が高いわけではなく、たいていの場合は薬を使いながら母乳育児を続けることができるのです。赤ちゃんにとって母乳はもっとも好ましい栄養源です。病気に対する抵抗力もつきます。薬の害を心配しすぎて、自分だけの判断で母乳を中断せずに、授乳中は、市販薬も含め必ず医師や薬剤師の指導のもとでご使用になってください。

ここでは、安全に母乳育児を続けるためにお母さまに注意して欲しい点をあげます。

授乳時期に注意しましょう

とくに注意が必要なのは、生後1~2カ月くらいまでです。まだ、肝臓や腎臓の働きが不十分で、薬を排泄する能力が低いため、場合によっては、母乳中の薬が赤ちゃんの体内にたまり、思わぬ症状を起こすおそれがあります。母乳による副作用報告例は少ないのですが、その多くは新生児で起きています。

逆に離乳食を始めるころになると、赤ちゃんの発育とともに母乳を飲む量も減り、薬の影響は少なくなります。もし、影響があったとしても、たいていは一過性で軽い症状ですみます。

赤ちゃんを観察してください

念のため赤ちゃんの様子をよく観察しましょう。母乳の飲み具合、眠り方、機嫌、便の状態などに注意してください。もし、決まった時間に母乳を飲まなくなった、1回の睡眠時間が異常に長い(4時間以上)、うとうと状態が続く、変にぐずる、いらいら感、下痢、発疹など普段にない症状がみられたら、くすりを飲むのを止めて、早めに医師に相談するようにしてください。

薬を飲むタイミングを工夫しましょう

薬は、飲んだあと徐々に血液や母乳に移行していきます。一般的に母乳中の薬の濃度が最高になるのは2~3時間後です。ですから、薬の服用直前あるいは直後に授乳をすれば、赤ちゃんへの影響は少ないでしょう。
「毎食後」とか「寝る前」とかの指示がある場合には、服用時点の変更が可能かどうか医師や薬剤師に相談してください。

最後に参考として、断乳が必要なくすりと授乳中でも服用できるくすりを紹介しておきます。断乳が必要なくすりが処方されているのに医師からの断乳の指示がない場合には、医師に確認してください。

断乳が必要なくすり

断乳が絶対に必要となるのは、基本的には母乳にたくさん移行する薬です。また、母乳に移行する量が少なくても赤ちゃんに重い副作用を起こすおそれのある薬も医師から断乳を指示されます。たとえば、一部の抗がん剤や免疫抑制薬、放射性医薬品などがあげられます。具体的には国立成育医療センターの「授乳とくすりについて 授乳中に使用してはいけない薬剤の代表例」をご覧下さい。(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/med_druglist.html

授乳中でも使用ができるくすり

授乳中に安全な薬とは、母乳中へ移行しない薬、あるいは移行量の少ない薬、また移行しても副作用の少ない薬です。この場合は、授乳を続けることができます。
国立成育医療センターの「授乳とくすりについて 授乳中に使用しても問題ないとされる薬剤の代表例」(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/med_druglist.html)にこれらのくすりのリストがありますのでご覧ください。

稲田衣子(はからめ薬局)