薬と毒は表裏一体
秋には綺麗な花が沢山咲きますね。ついこの間、今年は猛暑の影響により彼岸花の開花が遅れているとニュースで報じられていました。
真っ赤に咲き誇る彼岸花は美しいですが、その美しさと同時に、不吉なイメージも強い花では無いかと思います。その理由として、彼岸の頃に咲き、墓地などで集団群生している様や、花の名前の不吉さが挙げられます。
なぜ彼岸花は墓地に多く咲いているか、これには昔からの知恵が生かされていることをご存知でしょうか?
古来より彼岸花には毒が含まれていることは知られており、それを利用した虫除け&モグラ除けとして、あぜ道や墓地に人為的に植えられました。(ちなみに主成分のアルカロイドはイネ科の植物への毒性が弱いそうで、
田んぼに植えるのにはもってこいだったようですね。)
強い毒を有している彼岸花ですが、逆に薬として活用している例もあります。石蒜(セキサン)と言う生薬として利尿・去痰作用を期待し、風邪薬などに配合しているのです。(2010年9月現在、10種のOTC薬で利用)
彼岸花と同様に秋の季語として知られているトリカブトも根を生薬として利用し、附子(ブシ)という名で有名になっていますね。こちらもアルカロイドが主成分で、弱毒処理して用いています。
さて、アルカロイドは塩基性の成分です。塩基性の薬は酸性の条件下では吸収がゆっくりとなります。すなわち、食前に飲むほうが吸収がゆっくりとなり、その副作用が出にくくなります。漢方を食前に服用する主な理由のひとつですね。
今回挙げたのは一例ですが、どんな薬も使い方を誤れば毒となり、適量を適切な症例に適切に用いれば薬となります。
毒と薬は表裏一体であることを肝に銘じ、医療に携わるものとしてこれからも日々適切な医療を提供できるよう精進したいものです。
藤波宏忠(イースト薬局)