投薬は母の愛の証
患者さんへ薬を渡す際に、医師や薬剤師は投薬、看護師は与薬という語句を世間的には用いています。投薬というと投げて渡すような、説明抜きの乱暴な渡し方が想起されそうです。そのため、薬局では服薬指導ですとか、交付など様々な言い回しを用います。
さて、その投薬の語源はと言うと、実に二千年以上前に遡ります。世間的には仏教の開祖として、一部ファンからは聖☆おにいさんのイメージで有名な釈迦(仏陀)が語源となります。
仏教の涅槃図に描かれている場面で「投薬」が登場します。釈迦が死の淵に瀕し、沙羅双樹のもとで入滅しようとする際に、我が子を救おうと、天にいる母親の摩耶夫人が薬を与えようとします。
天から地上にいる子へ薬を与えようとするため、二階から目薬どころの話ではなく、投げて与えようとするのですが、沙羅双樹にひっかかってしまい、釈迦へは届かずに終わります。
投薬は決して乱暴な行為ではなく、子を思い遣る母親が、天から薬を渡そうとする慈しみあふれる行為が語源なのです。
藤波宏忠(イースト薬局)
更新日:2013-08-15|カテゴリー:お知らせ